絶望の瞬間と新しい可能性

42/43
前へ
/106ページ
次へ
「天さ、怪我して靭帯痛めてバスケできないそんな状況で、俺にバスケを教えて、辛くないのか?」 気まずそうに、だけどはっきりと、太陽は私に言った。太陽の言った通り、私の怪我は靭帯損傷だ。全治はいつになるかもわからない。 正直な話、かなり辛い。今まで出来ていたものが出来なくなって、大好きなバスケをプレーどころか、日常生活までもが危うい。 でも。 「太陽が気にすることないよ。これは私が蒔いた種みたいなものだしね。それに、自分がプレー出来なくても、大好きなものに関われるってだけで、私には一番の幸せだから」 太陽に言った言葉に、嘘偽りはまったくない。バスケは大好き。 観るのも、 プレーするのも、 人に教えるのも。 確かに、一番はプレーすることかも知れないけど、私はその先の可能性を信じていきたいし。 正しい治療を受けて、安静にして決して無理はしない。 これを絶対条件で、数年費やせば、私は再びコートに立ち、脚は駆けれるようになる。 「だから太陽、あんたを教えるのにも、絶対に手を抜かないから」 「覚悟は出来てるよ、師匠」 ため息混じりに言う太陽に、私は満面の笑みで笑いかけた。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加