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「――――とまぁ、そんなわけで、私は右膝の靭帯を痛めて、バスケを断念。だからバスケしないの」
話し終わってみると、目の前には涙をぼろぼろと流す恵里佳の姿が。
右手にはきちんとハンカチを持っていて、大量の涙を拭っている。拭っても拭っても流れてくるのであまり意味はないけど。
「そっ、天ぢゃんは、バズゲが大好きなんだね。今もっ、うっ、バスケ、したいんでしょ?」
たまに恵里佳は、心を見透かしたようなことを言ってくる。その言葉がまた的を射ているから何とも言えないのだけど。
「うん。今でも、バスケ大好きだよ。出来ることなら、またプレーしたいって思う。もう膝は治ってるはずだしね」
「なら……!」
・・
言った通り、治ってるはずなんだ。
「私ね、バスケしたいのに、バスケするのが怖いんだ。また怪我して、今度こそできなくなったらどうしようって思っちゃって。そう思うと、身体が動かないんだ」
バスケ以外なら、出来た。現に今学校で体育をやってるわけだし。体育をやっても異常がないということは、本当に治ったということ。
でもやっぱり、怖い。
自分でもわかってる。あとは自分の、私の気持ちの問題だってことくらい。
「天ちゃん……」
気まずそうに言う恵里佳。そんな恵里佳に、私は秋津親子(主に佐弥夏さん)にもらった本を取り出した。
「これね、佐弥夏さんたちにもらったの。靭帯怪我した時のケアの仕方とか、いろいろ載ってるんだよ」
「うん」
「だからね、もう一度、頑張ろうと思うんだ。6年以上のブランクがあって、今からじゃ手遅れかもしれないけど、あきらめたくないから」
私が真剣に言うと、恵里佳はにっこり笑って、まるで自分のことのように嬉しそうに言った。
「せっかく佐弥夏さんたちがくれた〝希望〟だもんね」
「うん。私、頑張るよ」
大好きなバスケ。いつまでも怖がってなんかいられない。
今までは絶望しかなかったけど、今度は、新しい〝希望〟を持って。
柏木天 目標はもちろん全国制覇。
fin.
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