最大の別れ、そして今。

2/3
前へ
/106ページ
次へ
 今僕は霊園に来ている。  本当は父さんと来ようと思ったんだけど、どうしても今日までに終わらせないといけない仕事があるらしく、今日はこれないらしい。  今日―6月15日は、僕の母さんの命日。  母さんは、僕の誕生日の次の日に、息を引き取った。  母さんが亡くなって、もう10年。僕は高校生になって、バスケを続けている。  バスケを続けているのは、母さんが自分のしたいことをしたらいいと、小さい僕に言ってくれていたから。  今日は、ちょこっとだけ、僕の母さんの話をしようか。  優しい優しい、僕の記憶の中の母さんの話を。 ―――――――――――――――――  光、5歳。  春。  今日から晴れて幼稚園の年少から、年中組に上がる。  いつも通り母さんに起こされた僕は、ゆっくりと準備を始めて行った。   「こらこら、ひかるー?ちゃんと歯磨きしなきゃダメでしょー?」  僕は小さいころ、すごく寝起きが悪くて、歯磨きをしながら寝ていたりしていたらしい。  そのせいで母さんがいつも僕が落とす歯ブラシを取りに行って、大変だったと、父さんによく聞かされた。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加