過去と古傷と穏やかな癒し

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で、母さんと毎日のようにアホやってるうちに、オレは英語を喋れるようになってた。 「ほら、見なさい?ちょー簡単に英語喋れるようになったでしょ」 「カンタンじゃなかったと思うけど」 「何?何か文句でもあるの?」 「え?オレ、なにも言ってないけど?」 英語が話せるようになって、オレは(強制的に)母さんに連れられて、アメリカの学校に見学に来た。 今考えると、不思議でしょうがない。 なんで母さんはわざわざアメリカの普通の学校にオレを通わせたのか。 もしかしたら、バスケをもう一回やってほしいって気持ちが、母さんにはあったのかも知れないけど。 オレには母さんの考えが全く読めねぇ。 「ほら、英語も話せるようになったんだし、学校はここに通うのよ?」 「……いつから?」 「来年度から。日本の小学1年生と同じ歳で入学するのよ」 「……そっか。うん、いいよ。これからは学校も行くし、外にも出るよ」 「そう」 オレがそう言うと、母さんは柔らかく微笑んだ。 その時、5歳だったオレでもわかったことがあった。 母さんが、どれだけ自分のことを心配してくれてるのかが。 痛いほど伝わってきたんだ。
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