過去と古傷と穏やかな癒し

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それから約一年経った頃。 オレはアメリカの学校に入学した。 最初は、当たり前だけどやっぱり知らない人ばっかりで、柄にもなく緊張した。 でも、もともとオレは人見知りするタイプじゃなかったから、気付いたら沢山友達が出来てた。 「おーい、ツバサ!一緒にバスケやらないか?」 「お、オレはやらないよ。出来ないし、さ。ここで見てるよ」 学校にも随分となれた頃、友達にバスケをやろうと言われたのは、学校が終わって遊んでいる時だった。 別にバスケをやろうと言われたのはこの時が初めてではない。 前にも何回か言われたし、体育の授業中だって言われたことがあった。ことごとく回避してはいたが。 オレはこの時、まだバスケに怯え、バスケからとことん逃げていた。 そんなときだったか、バスケを見ているオレに、一人の日本人が話しかけてきた。 「ねぇ、翼くん。君は、バスケしないの?みんな楽しそうだよ」 「ん?……悠太か」 花村悠太(ハナムラ ユウタ)。 コイツはオレがアメリカで作った友達の中で、唯一日本人だった。 悠太は親の仕事の都合でアメリカに来たらしかった。 日本から逃げたオレとは似ても似ても似つかないと、自己紹介をした時思った。
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