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悠太の言ったとおり、オレがバスケをやっていたのは本当のことだ。
でも、オレはアメリカに行ってから、例え親しい友達でも唯一人にも、アメリカに来る前バスケをやっていたことを、話したことは無かった。
だけど、悠太は知っていた。おそらく、だが。
「いや?オレはバスケはやったことないかな。サッカーとか野球ならあるけど」
オレは苦し紛れに嘘を着いた。なかなか上手に演技が出来た。
でも、オレが言ったことはすべて反対のこと。
『あぁ。バスケはやったことあるよ。サッカーとか野球はやったことないけど』
オレが言ったことを反対にしてみるとこんな文になる。
ホント、自分の臆病さと卑怯さには呆れて何も言えない。
「そうなの?ごめんね、疑っちゃって」
「いーや、いいよ、別に。バスケのルールってわからないんだ。悠太教えてくれねぇ?」
また、嘘をついた。
嘘を信じてくれる悠太に罪悪感を覚えながら、自分の顔に嘘の仮面を被せていく。
誰も本当のことなんて、知らなくていい。
誰も、オレの素顔を見なくていい。
嘘をつくたび、そう思った。
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