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はっきり言ってしまえば、アイツ――佐々木は上手かった。
オレはやらなかったから知らないが、同年代の友達が佐々木と勝負をしたが、まったく歯が立たなかった。
「お前、バスケ上手いんだな」
オレは、話しかける気なんて一切なかったはずだった。なのに、気付いたら自分から佐々木に話しかけていたんだ。
「そうかな?自分じゃわからないんだけど……。えっと」
「あ、オレ秋津翼。よろしくな。翼でいいぜ」
「よろしく、翼。翼はバスケしないのか?」
おそらく、っていうか絶対佐々木は勘が鋭い。
鋭すぎるだろ。なんでいきなりそんなことを聞いてくるんだ。
「あぁ、バスケはやったことないしルールも――――」
「嘘だよね?」
佐々木はオレの言葉を途切れさせ、オレにそう言った。
正直言うと、内心かなりドキドキしてた。
なんでわかるんだ、とか思って、だけど表に出さないように平然として。
「なんで嘘だって思うんだ?」
「ん?勘。っていうのは嘘。バスケを見ていた目が、すごく懐かしいものを見ている感じだったから」
この会話は、オレと佐々木以外には聞こえていない。変な空間内にいるとかじゃなくて、ただ単に、オレも佐々木も英語じゃなくて日本語で話しているから。
日本人に会ってわざわざ英語で話すなんて馬鹿げてる。日本で英語で話すみたいなものだ。
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