過去の栄光は優しい思い出

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――「佐弥夏さん!!」 それは、いつものように練習を見に来てあげた日の、ちょうど帰ろうとしたときだった。 今は4月下旬。 1年生初のインターハイ予選は、まだ約1ヶ月ほど時間があるはずだ。 この子達はみんないい素質を持ってる。 じっくりと育てて行こう。 そんなことを思いながら生徒よりも先に帰ろうとしたとき、1人の女生徒に声をかけられた。 彼女は柏木天(カシワギ ソラ)。学生の頃からの友人、小鳥遊麻恵(タカナシ アサエ)の娘さんだ。 麻恵とは似ても似つかぬような礼儀正しい子だった。……麻恵に似てるところもあったけど。 「天ちゃん、どうしたの?」 「佐弥夏さん、明日か明後日って空いてますか?」 「うん、空いてるけど……」 私が言うと天ちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべてきた。 明日は土曜日、明後日は日曜日だ。 日曜日は練習が無しで、土曜日は午前中だけだから、はっきり言って暇だったんだ。 「佐弥夏さん!私に、お母さんと佐弥夏さんの高校の時の活躍を聞かせてください!!」 「へ?」 しまった。 あまりの驚きにまぬけな声を出してしまった。
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