絶望の瞬間と新しい可能性

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「なんで太陽は部活何もやらないの?やんないならバスケやろうよ」 「やだよ。俺は部活には入らないって決めたの」 「むー」 あの時は部活を、というより、バスケをバカにされた気がして、太陽に滅茶苦茶怒ったのを覚えてる。 顔を合わせる度に喧嘩して、私は太陽の足を引っ掻けて転ばせるの。 まだ小学生だから、足の速さも変わらなかったから、私は太陽からすぐに逃げれた。 小学校の時は全然太陽と話してなかった気がする。話すというより、喧嘩だったからなー。 「お母さん!今度の土曜日にね、試合があるの。見に来てくれる?」 「うん、いいよ。天は出られるの?」 その質問が、嬉しかった。 待ってたの。母さんなら言ってくれるって、思ってたから。 「うん!18番だけどね、ユニフォーム貰えたの。もしかしたら2Qに出られるかも!」 「そう。流石は私の娘。バスケが上手ね」 そう言って、母さんはまた私の頭に手を置いて、優しく撫でてくれた。 バスケが上手くなれば母さんは頭を撫でてくれる。 バスケはすごく楽しい。楽しいことして誉められるなんて、こんないいことないと思った。 「お母さん、天頑張るね!」 「うん」 土曜日が待ち遠しくて、私はうきうきしながらも真剣に練習に取り組んだ。
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