絶望の瞬間と新しい可能性

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「ねぇ、天?」 「はい、なんですか?部長」 私に不意に話しかけてきたのは、当時の部長。 何事かと思い、私は部長の話に耳を傾けた。 「天は、美桜と仲がいいわよね?」 「はい」 「そのことなんだけど、嫌がらせとかそういうのは無い?大丈夫?」 嫌、がらせ……? どうして私が嫌がらせなんて受けなきゃいけないのか、まったくわからなかった。 だから私は、部長に聞いた。 「……あなたが先輩と仲良くしているのがね、つまらないと思う人がいるの。だから、天には気をつけてほしいの。美桜は天をすごく可愛がってるしね」 「はい……。でも、大丈夫ですよ?」 そう言って、私は練習に向かった。 もう少しで、本格的な練習に入る時間だから、シュート練しとかないといけない。 そう思いながら。 「美桜さん」 「天」 「今日は、勝ちます!」 「やってみなさいなー」 話し方はいつもと同じ。 でも、私に向けた瞳は真剣そのもので、ふざけてなんかいなかった。 そして私は今日、バスケを辞めることを余儀なくされることを、まだ知らない。
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