絶望の瞬間と新しい可能性

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練習が終わり、時刻は午後6時。 夏に近づいてきているせいか、空はまだ真っ黒に染まってはいなくて、ところどころに朱色とオレンジが混ざったような色が見える。 体育館の外には、部員の保護者たち。 遅くなるのはやっぱり危ないから、明るくても保護者が迎えに来ることになっているのだ。 そんな放課後のまた放課後、私は更衣室で着替えていた。 美桜さんとの一対一に白熱しすぎたのもあったけど、その後の練習で汗だくになってしまったから。 「いやー、それにしても。天のスピードはスゴいね」 「いえ。私くらい上位のチームにはゴロゴロいるでしょ?」 「そんなにはいないって。多少ならいるけどね。でも、天ならそいつら相手にいい勝負すると思うんだけどなぁ」 着替えていた私に話しかけてきた美桜さんは、私をこれでもかというくらい褒めまくっていた。 恥ずかしいにもほどがあるんですけど? 「褒めすぎですよ、美桜さんの方が技術上だし。美桜さんはF向きですよね、性格的に」 「どーゆー意味かなぁ?!」 あ。 言ってはいけないことを、私は言ってしまったらしい。
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