絶望の瞬間と新しい可能性

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「っ!待ちなさいよ、柏木!」 リーダー格の子が、更衣室から出ようとする私に向かって走ってきて、いきなり背中を押された。 「?!」 押された私は転倒。でもこんなのどうってことないから、立ち上がろうとした。 でも、立ち上がれない。立ち上がろうとしてるのに。立ち上がりたいのに、膝に走る激痛のせいで、足が言うことを聞いてくれない。 「え…………?」 無意識的にでた一言だった。 私には、なにが起きたのかがわからなくて。 自分の膝に、なにがおこったのかも、わからなくて。 必死に立ち上がろうとしている私を見たリーダー格の子が、私がけがしたことをわかったのか、小さく悲鳴を上げる。 「ひっ……」 怪我させる勇気もないなら、いじめなんてしなきゃいいのに。 「そーらー?何やってんのー?先生怒ってるよー」 外から、美桜さんの声が聞こえる。 この子たちじゃ、怖がっていて使い物にならない。 美桜さんに、助けて、もらわなくちゃ……。 「……お……さん。美桜さん!」 私は、膝の痛みに負けないように、力いっぱい美桜さんの名前を叫んだ。
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