絶望の瞬間と新しい可能性

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足に被さっていた薄いブランケットを取り外し、自分の目で見て初めて、右足が付いていることを知る。 安心と同時に、襲いかかる不安。 もしかしたら、もう立って歩くことも出来ないのだろうか。 そんな不安を胸に、私は考える。 感覚が無いのは、鎮痛剤のようなものを使ってるからかもしれない。 副作用のようなもので一時的に感覚がなくなっているのかも。 わかってる。 こんなのただの自己暗示だ。 そうだとわかっていながら、私は少ない可能性を信じることにした。 「……誰?」 ドアが、少し開いた。 ここは個室のはずだし、私の知り合い以外来ることは無いはずだ。 私が聞くと、恐る恐るといった感じで少しずつドアが開いていった。 私の目に映ったのは、私より少し大きいくらいの男の子。同い年くらいだろうか。 「え、えーと。ま、迷っちゃって」 小さい声だったけど、ちゃんと聞こえた。 迷ってて、どうしたらいいかわからないんだ、きっと。 「じゃあ少し話そうよ。私暇なんだ」 お母さんもいなかったし、ちょうど話し相手も欲しかった。 私がそう言うと、男の子は嬉しそうに笑いながら病室に入ってきた。 「やさしーね、君」 「そうかな」 「うん。あ、何歳?」 「9歳。小学4年生」 私は2月生まれだから、小4でもまだ9歳。 「マジ?!オレも9歳で小4!」
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