No. or only …

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緑 ぶつかったままの勢いで腕を回し抱きしめる。鼻腔を掠める村上の香りを肺一杯吸い込むと、それだけで幸せだと思っていたのに微かにカレの薫りが混ざっているのに気付いてしまい欲張った自分を呪いたくなってしまった。 「…どないしてん?たつ…」 抱きしめられていることを不思議とも思わず普段の調子で聞いてくる。 「…鈍感」 ぼそりと口をついて零れた言葉。ソレが嬉しい場合と悲しい場合がある。今はまさに…。 「たつ…」 聞こえ無かったのか、はたまた聞こえているのに聞こえていないフリなのか村上は回された腕にそっと触れてぽんぽんと優しく撫で摩ってくる。 その行動一つがどれ程の破壊力を持っているか分からせた方がイイんじゃないだろうか? この人には危機感が無い、もしくはカレ以外は範疇に無いのだろう。 大倉はまた、溜息を吐いてつむじに小さく口付けを落とし腕を振りほどいた。
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