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「またドジしてる?」
すると、人影が私を包んだと同時に聞き覚えのある声がしたため顔を上げた。
そこで私に微笑みかけているのは、皆さんの想像通り松本部長だった…
「あ…」
動揺と緊張で言葉につまる私は、本当にマヌケ顔だったと思う。
さっきまで、イケメンだけどムカつく男だと思っていたのに、部長だとわかった途端にドキドキするなんて…
いくら上司でも、岡田部長にはドキドキしないよ?
って、女部長だからか…
「植村さん?」
「は、はいっ」
ふいに名前を呼ばれて声が裏返る。
「これ落ちたやつ。営業先への広告は大切にね?」
にこやかに笑う彼に、私は顔が赤くなるのを感じた。
やめてっ。
そんな綺麗な顔で微笑まないで~…
これ以上はこの人と目を合わせられないよっ
そう感じた私は俯きがちに渡された広告を抱えて「すいません。ありがとうございます」と言うと、そそくさとディスクに戻った。
「ねぇ…」
「松本部長、内線からお電話です。」
松本部長が私に声をかけようとした瞬間、タイミング良く他の社員に呼ばれたため部長は行ってしまった…
何を言いかけたんだろう…
そう思いながら私は、松本部長が電話をしてここを出ていくまで、その整った容姿を見つめていた。
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