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その日の昼休み、いつもなら真っ先に昼食を食べに会社を出るのだが、とにかく栞に今日の事を言いたくて、トイレで栞に電話をしてみた。
「もしも~し、どうした?彩子」
二回目のコールで出た栞の声は、何故かどこか浮かれているように聞こえた。
「ねぇ、栞のとこの部長って松本部長?」
「え?そうだけど…あれ、言ってなかったけ?」
「言ってなかったよっ。もう、名前を聞いてなかったから私今日、凄い恥ずかしかったんだからね!?」
名前を聞いてなかった私も私だけど…
部長って知っていれば、資料室の時みたいな失態は犯さなかったのに…
私が憧れていた部署のイケメン部長…
「だって彩子、私がイケメン部長の話しても興味なさげだったじゃん」
「い、いや…そうじゃない…多分…」
「ま、あんたの事だから、私がイケメン部長の話しても僻みが出てつまんなかったんだろうけど?」
…栞は私をお見通し。
確かに私は、岡田部長の愚痴ばかりで栞のとこの部長を僻んでたかも…
「…はい、仰る通りです」
「てかさ、彩子何?松本部長と話したの?」
「あ、その話は長くなるかも…」
「わかった!じゃあ五分後に一階ロビーね!」
そう言うと私が返事をする前に電話は切れた。
「…本当、やる事早いわ。」
明るくて元気な栞は、いつも私を引っ張ってくれる。
今みたいに、すぐに簡単な段取りまでして…
「了解っ」
パチンと携帯を閉じると、小さく笑ってから階段を目指した。
階段を使えば大体、五分は稼げるしね。
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