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-EPISODE 1-
「頼まれていた資料持ってきました。」
ドサッと音をたてて部長のデスクに束になった資料を置くと、私は自分の業務に戻ろうと踵を返した。
「ちょっと植村さん!これ違うじゃない。」
「え?」
振り返ると今私が置いたばかりの資料の一枚を手にして私を睨む部長と目が合った。
だけどそれは確かに先ほど頼まれていた資料で、間違うはずがなかった。
「これは去年の秋にやった会議録でしょ?私が言ったのは去年の春。一年前のものって言ったじゃない。どうしてこんな事まで満足に出来ないのかしら?」
…あぁ、またやってしまった。
これで何度目のミスだろう?
いつもの事過ぎて不思議と驚きの感情もなかった。
ここに入社してもうすぐ半年が経つのに、私は何をしているんだろう…
「す、すみませんっ!すぐに持ってきます!」
大勢の先輩、同期達の哀れみさえ含んだ視線を背中に感じながら私は再び、今度は駆け足で資料室へ向かった。
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