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「いったぁ…」
尻もちはつくし頭は痛いし部長には毎日のように叱られるし。
この会社に来てから良い事無いよ…
もう今日は帰りたい。
ため息と共に涙も出てきた…
手切ったかなぁ…
ピリッとした痛みを感じて左手を見ると棚の角に擦ったのか、少し切れていた。
「…ッ」
痛みを堪えながら私は再び顔を上げて『平成二十二年春』の資料を睨んだ。
「おい、大丈夫か?」
不意に誰かが明るい廊下から声をかけてきた。
ふんっ。大丈夫なわけないでしょ。頭も手も心も全部痛いんだからっ。
全てにムカついた私は、その声を無視して立ち上がると、再び爪先立ちで痛くない右手を伸ばした。
その瞬間、誰かが私の真後ろからピッタリと密着して…
ふわりと香水が香ったと思うと、長くスラッとした手がその資料を取った。
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