-EPISODE 1-

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「いったぁ…」 尻もちはつくし頭は痛いし部長には毎日のように叱られるし。 この会社に来てから良い事無いよ… もう今日は帰りたい。 ため息と共に涙も出てきた… 手切ったかなぁ… ピリッとした痛みを感じて左手を見ると棚の角に擦ったのか、少し切れていた。 「…ッ」 痛みを堪えながら私は再び顔を上げて『平成二十二年春』の資料を睨んだ。 「おい、大丈夫か?」 不意に誰かが明るい廊下から声をかけてきた。 ふんっ。大丈夫なわけないでしょ。頭も手も心も全部痛いんだからっ。 全てにムカついた私は、その声を無視して立ち上がると、再び爪先立ちで痛くない右手を伸ばした。 その瞬間、誰かが私の真後ろからピッタリと密着して… ふわりと香水が香ったと思うと、長くスラッとした手がその資料を取った。
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