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少し胸が高鳴って驚いた表情で振り向くと、背が高くて黒のスーツを着こなしていて、いかにもモテ顔の男性が私に資料を差し出してきた。
「はい、どうぞ。」
当たり前のように渡された物を静かに受け取るが言葉が見つからない。
「あれ、植村さん?」
「あ、いや…ありがとうございます。」
「どういたしまして」
小さくお礼を言った私に彼は優しく微笑む。
その笑顔に私の胸は再びドクンと脈を打った。
「それより、何で私の名前を?」
そう。私はこの人を知らないはず。
胸の高鳴りをごまかすように聞くと、その人は悪戯な笑みを浮かべた。
「だって君の事は、うちの部署じゃ有名だし。植村彩子さん。」
「…ゆ、有名って…?」
「君がいる営業部の部長と俺、知り合いだからさ。」
私をいつも叱ってるあの女部長とこの人が知り合い?
「あの…よくわかりません…」
私の中で、あの鬼のような人と知り合い=物好きになってしまう。
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