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本来は人気の無いはずの夜の工事現場は、多くの人間でごった返していた。囲いの外にも多くの野次馬が集まり、物々しい雰囲気に華を添える。その騒ぎの中心で、背広姿の三十歳代と思しい男性が寒そうに体を震わせながら、彼よりも少しだけ年上らしい眼鏡の男性に報告をしていた。
「被害者の名前は倉橋健造、五十七歳、ここの隣にある泉田ビルの二階にあるクラエ株式会社の社長のようです。株式会社と言っても社員は倉橋を入れて二人だけのようですが」
背広姿の男性から報告を受けながら、眼鏡をかけた男性が悩ましげに顔をしかめる。
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