雪の降る夜の問題

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「いやあ、寒いね」  ビルの管理人をしている中山幸太は不意に掛けられたそんな言葉に顔を上げた。そこには厚手のコートに手袋と言った出で立ちの男性と、背広姿の中年男性が立っていた。 「やあ、クラエさん、おそろいで、もうお帰りですか?」  中山は手元に広げていたノートを閉じ、返事をする。彼の横に取り付けられている時計を見ると、午後六時半を少し過ぎたところだった。 「いやあ、今日はちょっと遅くまで掛かりそうだから、先に食事をと思ってね」  中山にクラエさんと呼ばれた、コートの男性は人好きのする笑顔で応える。
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