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「何か、騙していたみたいで……ごめんね。」
詩姫は少し寂しそうに、朔夜に言う。それから言いにくそうに。
「あのね、あたしは崎雪詩姫。一年前は魔鏡界のちょっとしたき……、貴族の一人娘だったの。」
「魔鏡界の三大貴族に含まれる、ちょっとした貴族です。」
優里がにた、と笑って言った。詩姫はキッと優里を睨みつけるが、優里はニマニマ笑いを止めない。
「一年前?」
朔夜が問うと詩姫の顔が、かぁぁぁっと赤くなった。まさに林檎並みの赤さだ。
「あたし、もうあの家に住んでいないの。一年前……。」
詩姫は俯いてううっと唸った。上目使いに朔夜を見上げて、小さくボソボソと呟く。
「あたし王家に嫁いだから――王家の第一皇子に。……どっかの、誰かさんにね。」
詩姫は朔夜の頬をつついて、はにかんだ。
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