なんだっけ

2/2

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
何時も通りの気怠い授業を終え、ぼんやりとした放課後を過ごす。薄暗くなった教室は少し寂しげ。誰もいない。何もない。私だけの空間。この世界で生きているのは私だけなんじゃないか、なんて錯覚してしまう程の静寂に包まれている。何者にも邪魔をされない私だけの時間。椅子に跨がり、黒板を見つめる。酷使され続けたのであろうそれは少しばかり汚れていて、私に似ていると思った。ふと思いたって机の中へ手を入れると、入れた記憶のない物が入っていた。 「、なんだこれ」 それは写真だった。 年代物なのかはたまた珈琲でも零したのか所々黄ばんでいる。幸せそうな何処にでも居るような家族の写真。見たことのないものが入っていたことに多少驚きはしたものの、写真を見ると何故か懐かしさが込み上げてくる。私はこの家族を知っているような気がする。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加