ねこだまし

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私をそばへ置いたのは私が彼女に似ていたからですか そんなことはないよ うそをつかないでください。彼女の着ていた着物を着せ彼女の使っていた部屋を使わせ彼女のように接するのは、私を彼女に重ねていたのでしょう? そんなことは…… 私はその先の言葉が出てこなかった。言い切れなかった。そんなことはない君は君として彼女は彼女として接していた、彼女と君は赤の他人だ、すべて君の勘違いだと言い切れなかった。 私はどこかで彼女と君を重ねていたのかもしれない。けれど、私が君に抱く気持ちは紛れもない本当の気持ちである。それだけはわかって欲しくて言葉を紡ごうとしたがぱくぱくと開閉をするだけで声が出なかった。君に目この姿はなんと写ろうか。図星をつかれてあわてふためく、そんな男に見えるのだろうか。
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