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平生私はあまり外に出て行かない人間で家にいることのほうが多かった。別に外に出ることに対して嫌悪するとかといったことはまるでなくただそんな気になれないのである。また、出て行かないとはいってもあまりというだけであって、まったくというわけではなかった。食料や生活用品、仕事用具など必要な物があったときや心が重く暗くなってどんよりとしているときには外へ出ていた。
丁度その日私の心持ちは軽やかではなかった。煮詰まってしまってどろどろになってどうしようもなくなってしまいそうであった。いや、どうしようもなくなってしまった。だから、外へ赴くことにした。所謂気分転換というやつである。
外にでると、いろんな輩がいる。純真無垢な幼子を引き連れて歩くやつれぎみの母親。男女仲睦まじく寄り添い歩く姿。はたまたけして女性に人気のある顔立ちをしているといえないような油ぎった中年の男の腕に引っ付く学生であろう可憐であどけなさの残る顔立ちの少女。犬にたいそうな首輪をつけ縄をつけ道端にされた犬の糞を知らんふりをしてなにごともなかったかのように歩む犬そっくりの婆さん。といった具合に。
私は彼らのような人間を見ると心が軽くなることに気がついた。なぜなのかはわからないが。知りたいと微塵も思わない。私の心持ちがすっきりしてしまえばどうだっていいのである。
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