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目を開いて見渡した世界は一面赤と黒。空までもが赤黒く、一体今が昼なのか夜なのかが解らない。着ている物も変わっていた。メイド服のようなドレス。膝丈のスカートにはふんだんにレースがあしらわれていて、ヒラヒラフリフリ。メルヘンチック。カチューシャにも大きなリボンが着いていた。全体的に赤い。
訳が解らずどうしようかと途方に暮れていたその時こんなとこにいたんだ、と少し掠れた声が、聞こえた。驚いて声のする方へ視線を向ければ、そこには青年がいた。紫と黒の長めボーダーにぴっちりしたズボン、ブーツをはいて装飾品をじゃらじゃら付けた青年が。それだけだったらよかったのに、彼には普通の人間とは異なった特徴があった。ゆらゆらゆらゆら、定期的に揺れる細長い尻尾。時折ぴくりと動く耳。猫の、耳。猫人間。
「あなたは誰なの?」
自分でも驚く程落ち着いた声が出た。なぜだろう、私は彼をしっている気がする。
「僕?僕は僕だよ。可笑しな事を聞くんだねアリス」
「アリス…?」
「君の名前さ」
「私はアリスなんて名前じゃないわ私は…」
いつの間に移動したのだろうか彼は私の背後に回っていた。
「アリスはアリスさそれ以外の何者でもないよ」
有無を言わさない声で言われ、
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