一匹の妖怪と二人の僧侶

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ある閑静な森の中。 一人の少女が大声で叫びながら全速力で走っていた。 少女の後ろには、二足歩行の巨大な狼の妖怪が、これもまた全速力で走っている。 「ああ~ん、もう! どこまで追い掛けて来んのよ、このストーカー!!」 少女は時折背後に目をやって、妖怪の様子を伺う。 妖怪の体長は優に少女の三倍を超えていて、それに怖じけ付かないのは慣れか性格か。 走り続けるうちに、だんだんと息が上がって足の感覚も無くなって来る。 (あとちょっと、もうちょい! 頑張れ、あたし!) 少女は自分に言い聞かせ、とにかく走り続ける。 と、頭上からガサリと言う音が聞こえて来て、少女は内心安堵する。 少女はしかし、気を抜く事なく走り、そして不意に耳を押さえながら地面にダイブした。 したと同時に、耳を押さえているのに大音量の獣の叫び声が聞こえ、直後地面が揺れた。 少女は荒い息を整えながら、恐る恐る顔を上げて背後を振り向く。 そこには、つい先程まで自分を追い掛け回していた狼の妖怪が地面に俯せに倒れていた。
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