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尊は一人になったところで、一筋の涙を流した。
何故自分が泣いているのか理解出来ないが、一応それを拭って振り返る。
「なんでまたてめぇが居んだよ」
「居ちゃダメかい? 久しぶりにあんたの気を感じたから、まさかと思ってさ」
自分の背後にいたのは、翡翠だった。
尊は顔を歪めながら一度彼女と目を合わせ、それからすぐに外した。
「あんた、あれでよかったのかい? アタイはよかったと思わないけど」
「てめぇには関係ねぇだろ。失せろ」
「あ~あ、やな態度。まあその喋り方じゃないと気持ち悪いのは事実だけどね」
翡翠は呆れながらそう言って、意地悪そうに笑った。
「あんた、ホントは嬉しかったんだろ。自分の存在認めてもらえてさ。これじゃあ狐白の坊やの方が何倍も大人だねぇ」
「……うるせぇ」
「あんたもあんただよ。五百年も生きてんのにいつまでも意地張りやがってさ。まあ、あの人間のキャラは褒めてやっても良いけど?」
言いたい放題言われて尊の顔がどんどん険しくなる。
歪んだ口元から牙が覗く。
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