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「んな怒りなさんなって。よかったじゃんか、狐白の坊やが良い子で」
「…………」
「二人のところには戻らないのかい? 嬉し涙まで流して置いて」
嬉し涙? と心の中で呟きながら尊は腕を組み、辛うじて残っている壁にもたれ掛かる。
「ホントに分からない奴だねぇ、あんたは。アタイとあんた、同時に生まれた双子みたいなもんなのに、こんなに性格が違うなんてねぇ。アタイがあんただったら、喜んで二人のとこに行くよ?」
「オレはお前じゃねぇ。勝手なこと言うな。裂くぞ」
「いいよ? 別に。裂かれたって平気だし。まあ着物が破けちゃうのは嫌だけど」
飄々とした態度に尊の怒りは頂点にまで達するが、何故か今は怒る気にならない。
ふいっと顔を背けて、目をつむる。
「……なぁ、ホントに嬉しかったんだろ? だったら笑いなよ。ほら!」
「っ!?」
突然頬を抓られて上に上げられ、尊は驚く。
驚いて、慌てて翡翠の手を払った。
「てめぇ……何しやがる!」
「アハハ! 顔赤くなってやんの。ハハハ……」
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