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「じゃ~、アタイはそろそろ行こうかな。……あ、そうだ。紅の事、護ってくれてありがとう。あんたのおかげで無傷だったよ」
「…………」
「んじゃ、アタイはしばらく紅のとこにいるね。結構傍にいるから、何かあったら呼んでも良いよ。じゃあね」
翡翠は言って、姿を消してしまった。
一人になった尊はしばらくしてからため息をつき、何となく空を見上げた。
屋根が無くなってしまっている為、空高く昇っている満月が綺麗に見える。
夜の晴天。
月光が彼の中に流れる血をざわめかせる。
空に向けていた視線を下ろし、今度は自分の手を見つめた。
その手は微かに震えている。
「……満月じゃなきゃ、もう少しはマシだったろうな……」
低く呟いて、再び深くため息をつく。
さて、これからどうしようか。
紅の元に行きたくてもそこには翡翠がいる。
狐白達のところにも、正直行きたくない。
「…………」
長いこと立ちすくみ、考え、尊が出した答えは一つだった。
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