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そこまで言うと、尊は不敵な笑みを浮かべた。
獲物の小動物を前にした獣のように。
「お前、ホントに良い性格してんなぁ。オレもてめぇみてぇな性格なら、少しは違ってたかもしれねぇな」
「そうか? 今までずっと一緒にいたんだ。そんなの今更だぜ?」
狐白は無邪気に笑って、そう答えた。
少しずつ尊の禍々しい妖気が薄れてくる。
狼そのものの表情も優しくなって、いつもの尊に近付いていく。
そして彼は、目に涙を浮かべながら震える声音で問う。
「……本当に良いんですか? 私なんか、信用ならないでしょう。ずっとあなた達に嘘をついていたのですから……」
「はは、だからなんだよ。別に驚いてねぇ、っつたろ? 元々お前、俺より強かったし。それに……」
ちらりと椿に目をやると、彼女は笑顔で頷いて立ち上がり、尊を見上げた。
「あたし達のこと助けてくれたしね。尊がいなかったら、あたし死んでたよ?」
「俺も。俺蜘蛛苦手だからさぁ~。正直覚悟決めたぜ? 死ぬと思った」
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