720人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらくしないうちに、館全体を淡い明かりが包み込む。
明らかに月明かりではない。
その明かりが次第に強くなり、眩しくて目を開けられないほどにまでなると椿も尊も目を閉じた。
明かりが止んだであろう頃を見計らってそっと目を開くと、そこには壊れたはずの館が元の立派な姿で建っていた。
「……おぉ!? すげぇ! 初めてなのに上手く行ったぜ!! なぁ、尊。これで良い----……」
彼等と同じように目を開けた狐白は自分の成果に喜び、それから尊に声を掛けたが何か様子がおかしい。
口を噤んで、顔色の悪い尊を見上げる。
「えぇ……初めてだと言うのに、上出来です。ありがとうございます……」
「ちょ、尊? 大丈夫? 顔真っ青だけど……」
苦しそうな呼吸をする尊を、椿も心配する。
彼は無理に笑って顔の前で手を振ったが、駄目だった。
先程からあった頭痛に重ねて突然耳鳴りと眩暈が襲い、意識が遠ざかる。
そのまま彼は、地面に倒れてしまった。
「おい、尊? 大丈夫か? おい!」
大声で呼び掛けても返事はない。
最初のコメントを投稿しよう!