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狐白と椿は蒼白しながらもとにかく自分達を落ち着かせ、彼を元に戻った館に運び入れた。
布団の上に横たわらせて、休ませる。
呼吸はしているため命の危険はなさそうだ。
しばらく眠っている尊を心配そうに見下ろしていたが、不意に彼とは違う大きな妖気を感じて二人は顔を上げた。
この妖気は知っている。
狐白が襖の方に近付いて来た妖気を確認するために立ち上がり、手を掛けて開けようとした。
襖に手が触れた途端その襖が突然開き、狐白はびくついて耳と尻尾を飛び出させた。
それらは一瞬で消えたが。
襖の向こうにいたのは、予想していたのとは異なる妖怪だった。
雌の姿をしたその妖怪は狐白を無視して部屋の中で横たわっている尊を見て顔を歪めた。
「あ~あ~……無茶しやがるから……」
「なんだよ、お前。勝手に部屋入んじゃねぇよ」
「え? あ……アタイだよ? ほら、前に会った翡翠。覚えてないのかい?」
その自己紹介に狐白は更に不審がる。
どう考えても彼女、翡翠ではない。
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