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翡翠は言って、腕を組んだ。
月明かりに照らされる彼女の肌はまるで彫刻のようだ。
「……あいつ、素直じゃないからね。ほんとは坊や達と一緒にいられてすごく嬉しいんだよ。ずっと一緒にいたいんだよ」
翡翠はそこまで言って、微笑んだ。
優しい笑顔だった。
「おっと。こんな無駄話をしてる場合じゃないんだった」
「?」
「尊の奴は放っておきな。ひょっこり起きるだろうからね。そんなことより、坊や」
ガシッと腕を捕まれて、狐白は翡翠の顔と腕を交互に見つめる。
見つめて、彼女に問う。
「……なに?」
「坊や、この館を元に戻したんだろ? なら、出来るよ」
「だから、なにを?」
狐白の腕を引っ張るようにしながら、翡翠は彼に向かってウインクした。
「生き返らせて欲しい人がいるんだ」
その答えにようやく彼女についていこうと思った狐白はやっと歩き出した。
「生き返らせるって、誰を? そんなこと俺に出来んのか?」
「出来るよ」
そう言って、翡翠はそれ以上なにも言わなかった。
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