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「……ん、っ……」
ひどい頭痛だ。
頭痛で倒れたはずなのに、尊は頭痛によって目を覚ました。
体中がだるい。
起き上がれる自信がない。
「あ、尊。起きたの? 大丈夫?」
「…………あぁ、椿。すみません……」
しっかりしない意識の中でぼんやりと椿の姿を確認した尊は掠れた声で答えた。
「なんで謝んのよ。狐白は、外で翡翠さんとなんか話してる」
「……翡翠? ふぅん……」
つまらなさそうに声を漏らして、尊ははっきりした意識で天井を見つめる。
頭痛はまだするが、なんとか堪えられるレベルまで下がったようだ。
「……あの、さ、尊」
「?」
「こんな時に言うのも、なんだけど……」
そこまで言った椿はその後もじもじして何も言わなくなってしまった。
不思議に思った尊は彼女の方を向いて問う。
「なんです? 私は大丈夫ですよ?」
「……ん。そう……。えと、その……」
やはりなかなか話し出せない。
視線をきょろきょろと彷徨わせて、下唇を噛む。
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