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「なぁ、生き返らせたい奴って誰なんだ?」
狐白は翡翠に腕を引っ張られながら彼女について行く。
辺りは相変わらず彼岸花が咲いていて、それらを照らす満月は怖いほど美しく、大きい。
彼岸花の郷と呼ばれるに相応しい光景だ。
「……紅の姉ちゃんのことか?」
「ううん、違う。いくら坊やでも、紅は生き返らせられない。なんせ紅は、命の核を失ってるからね」
狐白の言葉に、翡翠は悲しい目をしてそう答えた。
その言葉に、微妙に頷いた狐白は突然胸騒ぎのようなものを感じて、口を開こうとした。
だが同じ瞬間、翡翠がにこやかに笑って言った。
「紅は平気だよ。尊が結界張ってくれてたからね。に、してもすごいわぁ。本人が張った結界なんだから当たり前だけど……尊のあの妖術受けても壊れないなんてねぇ」
「…………」
心の中を見透かされた感じがして、狐白は口を閉じた。
まあ、疑問が解決したのだから文句はない。
「……姉ちゃんの命の核って、どこ行っちまったんだろうな」
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