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椿は自分の生い立ちや、旅の経緯を全て彼女に話した。
翡翠は、見た目や喋り方とは裏腹に熱心に話を聞いてくれて、なんだか嬉しかった。
「なるほど。いろんなことがあったんだね。人間も大変だ」
椿が話し終わった後、苦笑いのような表情を浮かべた翡翠はそう言った。
少しの沈黙の後、再び翡翠が口を開いた。
「いろいろ教えてくれてありがとう。話したくないこともあったろうに……。ゴメンね……」
「いえ。お話を聞いていただけて嬉しかったです」
「ふふ、良い子だねぇ」
翡翠の短いその言葉に椿は軽く首を左右に振った。
振った後、翡翠の頭から生えている三角耳を少し見上げてから小さく口を開いた。
「……翡翠さんは、なんの妖怪なんですか?」
「アタイ? アタイはシロオオカミの妖怪だよ。尊と対を成す妖怪。紅と真逆に位置するんだ。尊と狐白の坊やと同じ関係」
「シロオオカミ……」
翡翠の三角耳が意図的にぴくぴくと動く。
彼女は耳を消すことはしない。
常に出しっぱなしにしている。
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