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「まあ、アタイの詳しい話は、狐白の坊や達が起きた時にさせてもらうよ。坊やにいろいろ説明しないといけないからね」
今話したら二度手間になっちまう、と笑いながら言って、聞いた椿はこくりと頷いた。
「さてぇ、もう夜も遅いし。椿、もう寝た方が良いんじゃない? いろいろあって疲れたろ」
「え、でも……」
「アタイのことは気にしなくて良いし、二人のことは見張っとくから」
翡翠の心遣いに、椿は忘れていた眠気に急に襲われ、頷いた。
「夜更かしは女の子の敵だからね。アタイは夜行性だから、目が冴えちまって眠れなくなるんだけど」
明るい翡翠の言葉。
なんだか霞がかった胸の内が綺麗に晴れる感覚がした。
椿は彼女の言葉に甘えて布団の中に潜り込む。
人形を胸に抱いて、一息ついたところで翡翠の声が聞こえてきた。
「明かり、消すよ? ゆっくり休みな。おやすみ」
「はい……おやすみなさい……」
翡翠は明かりを消した後、座ったまま暗闇の中に見える狐白と尊に目をやって、ふっと一度微笑んだ。
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