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鳥の鳴き声が外から聞こえてくる。
優しい朝。
椿はそっと目を開けた。
「お、お目覚めかい? おはよう」
「おはようございます……」
まだ眠気が頭を支配する中聞こえてきた翡翠の声に椿は反射的に答えて、体を起こす。
狐白も尊もまだ眠っているようだ。
特に狐白は珍しくちゃんと布団を掛けたまま眠っている。
「良い朝だねぇ。昨日のことが嘘みたいだね」
翡翠は言って、にこりと笑った。
さっき散歩に行ってきたんだ、と付け足して、机の上にある、昨晩までは無かったお菓子を指差した。
「これ、ここの神主が持ってきてくれたよ。すごく美味しいから食べてみな」
「え? 神主さん、無事だったんですか?」
「ん~ん、一回死んだ。狐白の坊やに生き返らせてもらったんだ。記憶は~……残ってなかったみたい」
苦笑いして翡翠はお菓子の小袋を一つ開けて、ぱくりと口に放り込んだ。
尊ほどではないが、彼女にも狼のような牙が生えているのが見えた。
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