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「ん、美味しい。昼頃には二人とも起きるだろ。女二人でゆっくりしてよう」
翡翠の言葉に椿は頷いた。
ぐぐっと体を伸ばして、あくびして、彼女の隣に行く。
「そういえばさ、椿は尊に命を助けられたって言ってたよね? それってホント?」
「はい、本当です。尊自身にも聞いたので……」
「ふーん……不思議。あいつ、そんなことしてたんだ……」
翡翠は呟いて、ちらりと尊に目をやった。
「……ねぇ、翡翠さん」
「ん? あ、さん付けしなくて良いよ。敬語も不要」
「え、え? でも……」
翡翠の言葉に椿は初め戸惑ったが、彼女の言う通り普通に接することにした。
「翡翠……は、尊がいつ人間になったか知ってる?」
「それがねぇ……アタイもちゃんと知らないんだよね。あいつ、いつの間にか存在消しちまってさぁ。でも多分、紅が死んじまってからだね」
「紅さんが、死んでから……」
椿の呟きに翡翠は頷いた。
ふと彼女の瞳を見ると、美しい翡翠色がなんだか滲んでいるように見える。
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