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「とにかく、自分の真逆の性格持ってた方が便利っちゃあ便利ってことだよな」
二人の場合は、の部分は敢えて口にせず、狐白はそう言った。
翡翠はその言葉に、怒りの色一色の表情を一瞬で和らげて、こくりと頷いた。
彼女の簪が綺麗な音を立てる。
尊は一度舌打ちをして、胡座を掻いた状態で膝に肘を置いて頬杖をついた。
視線は三人と全く関係ない場所に向いている。
尊が胡座を掻くの初めて見るなぁ、と思いながら、椿は彼の観察をする。
露出の低い黒ばかりの服。
防御よりも俊敏性を重視したような格好で、露出はないものの袈裟と比べるととても軽そうだ。
人間の姿の時に着けていた指輪や首飾りはそのまま残っている。
耳は、無い。
それは狐白も翡翠も同じで、妖怪の姿では人間と同じ部分に耳が現れないらしい。
しかし花魁のような翡翠と真っ黒で世間と調和していないような尊。
なんだかそこだけ世界が違う。
「で、坊やは自分の使命に気付いたんだっけ」
「え? あぁ……まぁ」
「じゃあ話は早いね。どこから始めようか。ねぇ、尊」
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