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しかしこの時点で椿の中に疑問が生まれる。
人間を助けるのが使命なら、なぜ尊は虐殺を繰り返してきたのだろう、と。
まあ話を聞いていれば分かるか、と思い、今は話を聞くことに集中しようと考えた。
「アタイらが生まれた大きな要因は、人間の望み。たくさんの人間の願いが具現化したのが、アタイらってことさ」
狐白はあまりよく理解出来ていないまま一応頷いた。
「紅は、自分達を苦しめるものを消し去って欲しいっていう願いを聞き入れて生まれた妖怪。重い税を駆り立てる連中とか、暴力を振るう奴を消して欲しいっていうね」
「人を消し去る……」
「もちろん、無理な願いは聞き入れないよ? 最後に判断するのは紅だからね。そんでその紅が生まれたのが千年前くらい」
狐白は最後の言葉に驚いて眼を丸くしたが、翡翠は構わず続ける。
「で、尊が全てを無に還して欲しいって願いを聞き入れる妖怪。飢饉とか苛政が続いた時代に生まれたんだ」
ここで椿の疑問が解決した。
全てが無になれば苦しまずに済む。
どうして虐殺が救うことに繋がるのか分からなかったが、これを聞いて納得した。
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