四大妖怪

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「あと紅が殺さなかった人間がいる村を壊す役目な……」 低く呟いた尊に、翡翠は頷いた。 「……そう。紅は優しい子だったから、なかなか自分の手で人を消すことはしなかったんだ。でも代わりに、尊がその村ごと襲って全部消しちまうんだ。解決することに代わりないからね」 「そっか……だから人間を……」 尊の優しい部分を知っている椿と狐白はそれを聞いて、心苦しくなった。 「で、アタイは人間の欲を叶える役目。単純に欲望を満たして欲しいって願いから生まれた。だから代償は払ってもらう。欲を満たしてやったら、本人か、代わりになる人間の命をもらう。それがアタイの役目」 ただ単純に幸せにしてやることがシロオオカミの役目じゃない。 一時の幸福に満たしてやるのが役目。 満たしてやったら、そこでおしまいだ。 「でも、病気を治して欲しいとか、お母さんを生き返らせて欲しいとか……そういう願いは、あんまり聞き入れてあげられなかったな。アタイには、できなかった……」 助けてしまったら結局何かを失うことになる。 翡翠にとって、それはとても辛いものであった。
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