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「まあくだらない欲を持ってる奴はさっさと聞き入れてやって消したけどね。そんなアタイと尊が生まれたのが五百年前」
「「五百年前!?」」
狐白と椿の声が重なる。
どうりで見た目と年以上に落ち着いて物知りだったわけだ。
驚きの余韻を引っ張ったまま、狐白が問う。
「姉ちゃんと尊、同時に生まれたのか?」
「ほぼ、同時。だから双子みたいなもん」
翡翠の言葉に尊は顔を歪めた。
「てめぇと同じにすんじゃねぇ」
「同じじゃないよ、双子って言ったの」
「なんかムカつく。その言い方やめろ……」
また言い争いが始まりそうだが、翡翠がなんとか持ちこたえて狐白の説明に入る。
「……で、狐白の坊やはなんの代償もなく人間を幸せにする役目。だいたい五十年前に生まれた。……皮肉なもんだね。人間が純粋に幸福を望むようになったのが、つい最近だなんてさ……」
寂しそうな翡翠の言葉に、二人は俯いた。
尊は頬杖をついて目をつむっている。
「四大妖怪のお話は、これでおしまい」
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