四大妖怪

24/28
前へ
/949ページ
次へ
尊は紅に特別な感情を抱いている。 眠る紅を見つめる尊を見た時、少しそんな気はしたが、やはりそうだったのか。 俯いたままそう考えていると、再び尊の声が聞こえてきた。 「一応言いますけど、恋愛感情は皆無ですからね。まぁ、惚れていた、と言うのは事実かもしれません。彼女は自分の役目に疑問を抱くことはありませんでしたから」 「え? でも姉ちゃんは、あんまり人を消さなかったんだろ? 矛盾してるぜ?」 狐白の言葉に、尊ではなく翡翠が目を伏せる。 「……私が、彼女に疑問を抱かせてしまったんです。私は自分の使命に疑問ばかり抱いていましたから。自分の使命に疑問を抱かない彼女に、私は自分の疑問をぶつけてしまった」 尊はまっすぐに狐白を見据え、続ける。 「自分の生きる意味が分からない。どうしてお前は自分の本能に従うのか、人を殺すことに疑問を抱くことは無いのか、と……」 「…………」 周りが静かになったような気がした。 みんな口をつぐんで、なにも言わない。 「その時から紅は、自分のすることに疑問を抱くようになってしまった。人を抹消する重圧から逃れようとして、愛情を求めた」
/949ページ

最初のコメントを投稿しよう!

720人が本棚に入れています
本棚に追加