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そんな尊の姿を見て、翡翠は黙り込んだ。
なにが正しくてなにが間違いなのか。
この世は分からないことだらけだ。
「ま、暗いお話はこれまでにしましょうね。すみません」
にこり、といつもの優しい笑顔で尊はそう言った。
彼は強い心の持ち主だ。
「それで狐白。ちょうど良い機会ですし、よろしければあなたが人間になりたがっている理由を教えてくれませんか? 嫌なら構いませんが」
「あ、アタイも知りた~い」
「え? あ、あぁ……。別に良いけど」
尊と翡翠に言われて、ぼーっとしていた狐白は慌ててそう答え、ガリガリと頭を掻いた。
「ん~、どこから話せば良いかなぁ。俺、生まれた時森ん中にいたんだ。キツネの格好で。一人でふらふらしてたらさ、一件の民家見つけたんだ」
「森ん中……。アタイとおんなじだ」
翡翠の呟きに狐白は頷いて続ける。
「んで、俺怖いとかなんとも思わずに民家に近付いて、そこに住んでたじいちゃんとばあちゃんに会った」
「キツネのですか?」
「人間に決まってんだろ、民家だぞ」
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