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「ひどい話だねぇ、そりゃ」
狐白は一つ頷いて、滲んできた涙を着物の裾で拭う。
「じいちゃんとばあちゃんは、俺を逃がしてくれた。それで助かったんだけど……二人は、駄目だった。妖怪を匿ったからって、殺されちまった」
「…………」
「で、俺……それで人間になるって決めたんだ。じいちゃんとばあちゃん死んじまったけど、恩返しのために。二人に世話して貰ってる間からずっと、本当の人間になりたいって思ってたから」
そんな理由があったのか。
三人の胸の内には、その同じ言葉が浮かんでいた。
狐白はいろんなことを思い出してしまい、泣き出してしまった。
そんな彼の背中を尊が撫でてやる。
「辛かったですね、本当に……。でもその気持ちだけでも、お二人は喜んでいると思いますよ」
「……ん、ありがとう……」
「……あなたは、良い方々に恵まれましたね」
尊はふっと笑って、狐白から手を離した。
離された狐白はいつもの無邪気な笑顔で顔を上げ、こくりと頷いた。
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