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しかし、どうにもそれが来る気配が無い。
はて、何故か?
疑問に思い、首を傾げる。
すると、ジャラリと金属の擦れ合う音が微かに鳴った。
ああ、そういえばそうだったな、と竜は思い出す。
そういえば俺は、鎖で捕まっていたんだ。
白銀の鱗が覆う身体に、何重にも重なり合う鎖。通常の二倍はあろうという大きさで、恐らくは竜の巨体に合わせた物だろう。
大きさだけでなく、巻き付け方もまた驚くものだった。
動けなくなる所に的確に鎖で押さえ、二つの翼を合わせて飛べなくし、尻尾を少し曲げて不意討ちさえも出来なくしている。
しかもだ。
竜しか知らない、炎を出させなくさせるツボにさえも、器用に鎖で当たる様にしている。
こうなっては、竜であろうと為す術は無い。
だが、こんな姿にされて悔しいや、自分はおしまいだとか言う諦めというものは、竜には無かった。
あるとすれば、好奇心。あるいは呆気にとられる。
何故なら、突然山にやって来ると、誰もが恐れる竜に向かって「竜退治に来た!」と言って瞬時に鎖を巻き付け、攻撃するかと思いきや、ちょうど良い石に座って身の上話を始めたのだ。
今まさに目の前いるこの男が。
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