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ちょうど、とある国で見知らぬ老婆に水を掛けられ散々な目に会った、という感じの話が終わる頃だった。
『………おい』
竜は、この時初めて男に話し掛けた。
あまり話すのは好きではなかったが、それでも、この男に対する好奇心とやらには打ち勝つ事は出来なかったし、拒む理由も存在しなかった。
竜の声に反応し、「んあ?」と何ともまぬけな声を出して男は顔を上げた。
「なんだよ、まだ話足りないんだけど?」
邪魔をするな、と顔に書いてあった。しかし、男がいきなり過ぎる程の勝手気ままな性格であったならば、竜も同じくらいの勝手な性格を持っていた。
細長い瞳で男を映し、鋭く尖る歯が並んだ口が少しだけ開く。
『………お前、いつまで喋るつもりだ。俺を退治しにきたんじゃないのか?』
「……………」
男は、沈黙した。
さっきとは打って変わって、あまりにも静か過ぎた。
また、竜は首を傾げる。
この沈黙の意味が理解出来なかったからだ。
すると、男の目が段々見開き、両手をぱんっと叩き合った。
「ああ!!そういやそうだっけ!」
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