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『………忘れて、いたのか?』
「いやぁ、もうすっかりと!」
―――忘れっぽいんだ、俺。笑う男を見て、竜は理解に苦しんだ。
(殺しに、来たんじゃないのか?)
ずっと、そう思っていた。
この山に来る人間は、いつだって竜を殺しに来た。理由を聞いたなら、やれ竜殺しの名声が欲しいだの、やれ人間が勝手に思い込んでいる竜の秘宝を盗りにきただの。
―――そういえば。
この頃、麓の村が竜を恐れ、金を出して竜専門の狩人に退治を依頼したという話を、鳥達が話していたのを思い出した。
『お前は、村人共に雇われた狩人だろう?』
「んっ?そうだけど?」
あっさりと答えた。
『………ならば、何故だ。俺を殺すという目的は、お前にとって死活問題に等しいはず。忘れるとは、到底出来まい』
ただ油断を誘っているのかもしれない。
油断させ、気を抜いた所で息の根を止める。
竜がこれまで見てきた殺し方。
それは、竜退治にだけ使われるものではかった。
人間が、人間に対してする方法だった。
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